そんなに暇なら本でも読みませんか?

書評、感想、おすすめ。少々偏りがありますが、わりと何でも読みます。

2013-01-01から1年間の記事一覧

終わりの感覚 ジュリアン・バーンズ

ジョーク・・・ユーモア・・・ウィット!ウィット! センスのいい。とてもお洒落な一冊。 先月、誕生日に友人からプレゼントしてもらいました。本当にありがとう。 __記憶と時間をめぐる物語。 今、思い出してみれば自分はどんな人生を送ってきたのだろう…

ドン・キホーテ セルバンテス

スペイン、ラ・マンチャ地方の田舎紳士アロンソ・キハーノ。 彼は騎士道小説の虜だった。我を忘れて、仕事すら忘れて、無我夢中でそれらを読み耽っていた。そのうち、読みたい物語を買うために、自分の所有していた広大な畑地まで売り払ってその種の本を買い…

ナ・バ・テア 森博嗣

僕は、空で生きているわけではない。 空の底に沈んでいる。 ここで生きているんだ。 スカイ・クロラの物語よりも少し昔。スカイ・クロラでもヒロインだった彼女”草薙水素”の過去を描く。 今作も依然として変わらない、森博嗣先生の名言流星群に立ち会えます…

ハル

さっき観てきました。本日全国ロードショー。 鮮度抜群すぎて残念ながらリンクがおかしいです。近々ちゃんと貼り直しますね。 いつもどおり一人で劇場に足を運んだわけですけど、女性率高すぎてすごかった。怖い。 ~あらすじ~ 飛行機事故で突如、最愛の人”…

言の葉の庭 新海誠

5月31日ロードショーということで、まぁその日に見に行っていたわけですけど。 本当に素晴らしい。男心も女心もくすぐる作品に違いない。 15歳の男子高校生と27歳の社会人女性の小さな恋を描いた物語。 ~あらすじ~ __靴職人を目指す主人公タカオ…

星の王子さま サン=テグジュペリ

”心で見なくちゃ、ものごとはよく見えないってことさ” ”かんじんなことは、目に見えないんだよ” 星の王子さま読みました。 とても丁寧に、読み手の呼吸に合わせるように、優しく綴られた言葉や物語が素敵です。 子供のころに楽しかったことも、嬉しかったこ…

風の谷のナウシカ 宮崎駿

神の産物。 よく映画がテレビで再放送されたりしてますけど、興味を持った方は一度漫画の方も読んでみることをおすすめします。 そういう私は小学生か中学生くらいの時に初めて読んで、最近また読み返したっていうわけなんですけど、やっぱ少し大人になって…

ふがいない僕は空を見た 窪美澄

人がこの世に生を受けるということ。 どんな人間にも必ず両親がいて、それはどちらかがオスで、どちらかがメスだろう。 何をどう誤魔化しても、目を背けても、性と生は切っても切り離すことのできない、コインの裏と表みたいな関係だといえる。少なくとも人…

何もかも憂鬱な夜に 中村文則

自分以外の人間が考えたことを味わって、自分でも考えろ 考えることで、人間はどのようにでもなることができる 世界に何の意味もなかったとしても、人間はその意味を、自分でつくりだすことができる ~あらすじ~ 施設で育った主人公の「僕」 親がいない”孤…

いるのいないの 京極夏彦

怪談絵本。 田舎のおばあちゃんの家で暮らすことになった少年の不安と違和感を巧みに描き出します。 絵本って世間一般では「子供向け」という認識が強いですけど、大人が読んでも楽しめるものはたくさんありますよね。同じ作品を読んでも幼い子供が感じるも…

SPEEDBOY! 舞城王太郎

ついていけなかった。文章も物語もぶっちぎりです。疾走しているというか、奔走しているというか。はっきりいえば意味がわからない。 どう解釈すればええねん。 獣の樹でも主人公だった”成雄”が鬣生やしたまんま、足速いまんま出てきます。まぁこういうこと…

キョウカンカク 天祢涼

女性を殺して焼却するという猟奇殺人事件が続く地方都市。 単独犯か集団による犯行か…犯人はマスコミから「フレイム」と名付けられ、世間を騒がせていた。 フレイムによる犯行で、幼なじみを殺された高校生”甘祢山紫郎”。跡を追って自殺を図ったが、寸前のと…

檸檬 梶井基次郎

メタと妄想が融合された作品。超短編。 「作者としての自分(現実)と作中の自分(妄想)を重ね合わせたり分裂させてみたりして世界を見つめなおすよ」という具合の小説(たぶん こういう気持ちは結構共感できる人多いと思います。いわゆる「およげたいやき…

銀河鉄道の夜 宮沢賢治

言わずともしれた有名作品。 ・・・これは、どこに面白さがあるんだ?と初めて読んだ人は思うかもしれません。というか私がそうでした。 いや、単に私の感性が乏しいのでしょうか。なんだかよくわからない謎の文章と不思議なストーリーに困惑します。でも解…

モルグ街の殺人 エドガー・アラン・ポー

推理小説の原点。 この作品が生まれなければアーサー・コナン・ドイルをはじめとする推理小説作家は世に出てこなかったとさえ云われている。かの有名な江戸川乱歩の作家名も彼の名前をもじったもの。 面白いかどうかと問われれば、正直微妙なところですけれ…

涼宮ハルヒの憂鬱 谷川流

一時期ものすごい話題になりました。 そして今少し驚いたのが「ライトノベル」と打とうとすると同時に「オタ小説」と候補にあがってくるという事態。何とも悲しい気分になりますが、まぁ放っておきましょう。江戸川コナンと打てば「工藤新一」と出るような時…

虫とりのうた 赤星香一郎

酷評することは簡単です。だからあまり好きじゃない、したくない。出来れば良いところをたくさん見つけだして称賛するという意味合いで書評を書きたい。 だがしかし、これは叩かざるを得ない。久しぶりに出会いました「駄作」です。 ~あらすじ~ 小説家を目…

プールの底に眠る 白河三兎

夏の終わり、僕は裏山で「セミ」に出逢う。 それは僕の目の前で首吊り自殺を図ろうとしている少女だった。 生きているけど、死のうとしている。その少女はとても美しかった。 「イルカ」の僕は彼女に恋をする。 __それから十三年の月日が経った。僕は彼女…

秒速5センチメートル 新海誠

__ねぇ、秒速5センチなんだって ___桜の花の落ちるスピード、秒速5センチメートル 突然ですけど私、新海誠の作品が大好きなんですよ。 身近なのに壮大で、儚いけど尊い。切ないのに美しい、そんな世界観。 見終わったあとに軽く鬱になりますけど、そ…

GOSICK 桜庭一樹

ヨーロッパの小国ソヴュール。極東の島国(日本)から留学した少年久城一弥は、聖マルグリット学園の図書館塔で奇妙な美少女ヴィクトリカと出会う。 金髪碧眼の天才美少女と、大和魂を秘めた日本男児の端くれみたいな少年が織りなすハーモニー。これがまた絶…

恋都の狐さん 北夏輝

微笑ましい。 狐の面をかぶった青年に淡い恋心を抱く女子大生の、初恋の物語。 んー、メフィスト賞って感じはしなかったかな・・・ ただ、「つままれた」という感じもなくもない。 まず気になったのが主人公の名前が一切出てこないこと。もちろん物語はその…

獣の樹 舞城王太郎

十四歳の僕が馬から生まれる。 記憶もない、名前もない。そもそも自分が何者なのか、人なのか馬なのかもさっぱりわからない。出産(?)の場面に偶然出くわした少年、河原正彦に拾われて僕は河原家の息子となる。 学校に通い、友達をつくり、そして生まれて…

これはペンです 円城塔

文学にルールなんてあるのか。 例えば文章を書くとして、「私」と書いたあとに連続する言葉はある程度決まっているのだという。それは「が」とか「は」とかいう接続詞だったり、または「出かけます」だとか「疲れました」でもいいし「あなたのことが好きです…

ハイペリオン ダン・シモンズ

これほど完成されたSFはない! ハードSFの中でも頭一つ飛び抜けている。秀逸な作品に出会うと、その世界に浸っている間、本当に時間を忘れてしまうものである。 各章ごとに綴られる冒険者たちそれぞれの物語、回想録。 それは例えばホラーであったり、ハード…

ディスコ探偵水曜日(上・中・下) 舞城王太郎

タイムパラドックスものかと思った。しかしそんなレベルを超越している。いろんな意味で「次元」が違う。 なんやこれ。 ミステリ、SF、ハードボイルド。まさにそのとおりである。ただしかしここまで読者を選ぶ小説があるものか。 内容もざっくりと紹介したい…

スカイ・クロラ 森博嗣

僕はまだ子供で、 ときどき、 右手が人を殺す。 その代わり、 誰かの右手が、 僕を殺してくれるだろう。 森博嗣はS&Mシリーズが代表作のような気がしていたけど、違うようだ。スカイ・クロラシリーズの方がどストライクである。個人的に。 とにかく美しい描…

膚の下(上・下) 神林長平

舌を巻くほどの美味だ。全て読み終わった瞬間に訪れる虚無感にも似た幸福感。胸いっぱいに流れ込んでくる哀愁。一瞬時間を忘れてしまう。 傑作である。 月開発計画は人間と、そして彼らに造られた機械人たちの手によって順調に進んでいた。しかし、監視する…

帝王の殻 神林長平

火星三部作、第二弾。「あなたの魂に安らぎあれ」の続編。 あれから遡ること70年前のお話、火星の都市「秋沙」の人々は、自我の分身ともいえるパーソナル人工脳「PAB」を所有していた。自分の経験をPABに入力していくことによって、PABはその人間と共に成…

脳男 首藤瓜於

これは上等なエンタメである。そして同時に、脳医学の本でもある。 特に良かったのが、登場人物のキャサリン・ブライマーの言葉 「わたしという自我をひとつにまとめている力が感情だといえる」 「思想も信念もただの言葉。言葉というのは他人のもので、わた…

あなたの魂に安らぎあれ 神林長平

放射能による大気汚染は人間を太陽の下から追いやった。舞台は核戦争後の火星。もちろんifのお話。地表は人間の生活できるような環境下ではなくなり、人々は地中深くに空洞都市をつくり、まるで日の光から逃れるもぐらのような生活をおくっていた。代わりに…