そんなに暇なら本でも読みませんか?

書評、感想、おすすめ。少々偏りがありますが、わりと何でも読みます。

膚の下(上・下) 神林長平

舌を巻くほどの美味だ。全て読み終わった瞬間に訪れる虚無感にも似た幸福感。胸いっぱいに流れ込んでくる哀愁。一瞬時間を忘れてしまう。

傑作である。

 

月開発計画は人間と、そして彼らに造られた機械人たちの手によって順調に進んでいた。しかし、監視する側の人間と、作業に徹する側の機械人との間に少しずつ不和が生じる。根本的な考え方が全く異なるからだ。

機械人と人間との間に生まれた小さな確執は、いつしか人間たちの中で徐々に不安を膨らませた。恐れが引き起こす狂気なのか、それとも遠い未来を見越して芽を摘んでおきたかったのか。人間による機械人の撲滅が起こる。「月戦争」と呼ばれているそれは地球を荒廃させ、そして月を消し飛ばした。結果的にいえばこれは人間達の手による一方的な星破壊に過ぎなかった。

戦争後、荒廃させた地球環境を復興させるために必要なのは人間の手ではなく、皮肉なことに自分たちが手にかけた機械人の力こそがそれに必要だった。しかし、それを監視する立場にまた人間を置いたところで、今度は何が起こるか分からない。そこで人間によって開発されたのが、人造人間アートルーパーである。

物語は、その中の一人。アートルーパーの慧慈を軸として語られる。

 

美加との出会いや、約束。そして、日記がね。はぁ。

慧琳もサンクも賢いし。はぁ。

長編ですが、是非皆さんに読んで欲しい作品です。