そんなに暇なら本でも読みませんか?

書評、感想、おすすめ。少々偏りがありますが、わりと何でも読みます。

これはペンです 円城塔

文学にルールなんてあるのか。

例えば文章を書くとして、「私」と書いたあとに連続する言葉はある程度決まっているのだという。それは「が」とか「は」とかいう接続詞だったり、または「出かけます」だとか「疲れました」でもいいし「あなたのことが好きです」でもいいかもしれない。しかし意味さえ通っていれば、誰が、どんな言葉を、どんな状況で、どんな風に連続させてもそれは文章になるのだろうか?

文章を自動的に生成する装置を発明した叔父と、その姪の物語「これはペンです」

(ものを書くとはどういうことなのか)を題材にしたお話。

 

もう一つの収録は「良い夜を待っている」

超記憶能力を持ち合わせているが故に、過去と現在の区別、時間が連続して流れているということが感じられない父親と、その息子を描く。

例えば五時間前と五分前では、私たちにとって大きな時間差に感じられるが、こういった超記憶能力を持った人間(ここでは作中の父だが)にとってそれは大差ない時間の感覚なのだ。「さっき」と「今」の区別がまるで感じられないのである。その父親にとっては(五時間前)も(五分前)も途切れる事のない「今」。現在進行形なのである。

 

どちらも面白かったです。なんだろう「新しい小説」ってこういうことだな。読んで衝撃を受けた小説って人それぞれあると思いますけど、円城塔の作品はいろいろな人にとっても刺激になると思いますよ。むしろスパイスが効きすぎてるぐらいですね。