虫とりのうた 赤星香一郎
酷評することは簡単です。だからあまり好きじゃない、したくない。出来れば良いところをたくさん見つけだして称賛するという意味合いで書評を書きたい。
だがしかし、これは叩かざるを得ない。久しぶりに出会いました「駄作」です。
~あらすじ~
小説家を目指す主人公”赤井”は、ある日河川敷で必死に助けを求めてくる少女に出会います。「あの男に殺される」と、彼女は自分の後を追ってきた男を指差していいます。しかし、その男は自分は少女の父親だと言い張ります。娘が迷惑をかけてすまない、悪いが返してくれと。騒ぎに集まった周りの人達にも言い含められて、赤井はどこか不信感を抱きながらも少女を男に引き渡します。
しかし後日、あの時の少女が男に殺されたという記事を目にします。父親だという言葉はよく考えれば嘘だと分かったはずだ。どこかおかしいという事には気づいていたのに自分は救えたはずの命を見過ごしてしまった。後悔と自責の念から、少女の葬儀に参列する赤井ですが、そこで少女の同級生たちが口にする奇妙な都市伝説を耳にします。
「虫とりのうた」と呼ばれる都市伝説を__
「虫とりのうた」の内容とリンクするようにして、次々と周囲の人間が死んでいくというサイコホラーもの。
しかし、ここまでつまらないとは思わなかった。ある意味で期待を裏切られました。
メタファー的な要素も組み込まれていたり、シンクロニシティを軸として物語の構成を組み立てたりと、これだけ聞けば面白そうですが、残念。全てにおいて終わってます。
まず登場人物達の会話がリアリティに欠ける。緊迫感や臨場感を台詞で表現するのは小説としては当たり前ですが、これを読んでいると何だか設定に忠実な棒読みの言葉を、ただ漠然と読まされているような気分になります。
赤井が六歳の息子”真樹男”に「かけつけ三杯」という言葉の意味を教える場面があるのですが、このへんすごい気になった。
六歳の子供相手に”室町時代”がどうとか”一献”だの”式三献”だのって得意げに言葉の成り立ちを説明する父親。わかるわけないだろ・・・小学校すら通ってないやん。とか思ってたら息子は息子で「そうなんだ!」みたいな感じで理解しているご様子。
ありえん。
あと”黒沼志頭馬”の予言詩も子供じみていてかなり白けさせてくれます。
大空襲や、震災、原爆投下など、将来起こるとされている様々な出来事を予知し、「詩」という形をとって記すなどしていた志頭馬。恐るべき予知能力の持ち主だったらしいのですが、彼の詩を元にしたこじつけが酷くダサいです。もう笑うしかないです。
原爆投下を予知した詩「魔物」
{大きな島へは小さな少年の姿をした魔物=広島:リトルボーイ}
{小さな島へは太った男の姿をした魔物=長崎:ファットマン}
地球温暖化を危惧した詩「暖かい亡霊」
{暖かい亡霊=温室効果ガス}
中二病が訳したような名前のこじつけが最悪だった笑
「暖かい亡霊」ってなんやねん笑
もう苦笑いするしかないですよ。酷すぎるわ。
展開もわかりやすく、何の読み応えもありません。半分読んだら黒幕も何もかも大体分かります。一応、伏線らしいものも張られていますが、これじゃあ伏線とすら呼べません。「これからあれが起こりますよ」「このあとこれをしますよ」みたいに宣言されているようなものです。
メフィスト賞受賞作品とは俄かに信じ難い。作者の方すいません。スッキリしました。