そんなに暇なら本でも読みませんか?

書評、感想、おすすめ。少々偏りがありますが、わりと何でも読みます。

フリッカー式~鏡公彦にうってつけの殺人~ 佐藤友哉

シスコンの彼。鏡公彦がこの物語の主人公。しかし、そんな彼の愛する妹が、ある日突然自殺してしまう。

信じられないような現実を、受け止められずにいた最中、彼の元に謎の訪問者が訪れる。わけも分からないまま見せられたビデオデープの内容は、謎の男達に妹が陵辱されている映像だった。

とまぁこうして公彦の、レイプ魔たちへの復讐劇の幕は切って落とされるわけなのだけど。

レイプ魔たちへの報復が、そのレイプ魔たちの愛娘の誘拐、監禁という行為なわけで。

犯罪に対して、犯罪でやり返す。いやいや、ハンムラビ法典じゃないんだからさ…と言いたくなってしまうところだが、公彦がスタンガン片手に標的を捕らえていく様は意外と面白い。

きっと誰しも、こういう過剰な報復行為をやってみたいと、一度は妄想したことあるんじゃないかなぁ。「ここまでされて黙ってるわけにはいかない」だとか「やられたら三倍返しだ」的な、少し残酷な一面も人間は持ち合わせているはず。

それが無益なことだと分かっているから、みんな実行にうつしたりはしないものなんだけど…言ってしまえば、この主人公もそんなことは百も承知で、自分に言い聞かせるように独り言でつぶやいたりしている。彼もまた、自覚のある犯罪者なのである。

 

発端から、話の顛末に至るまで、だいぶ流れの早い作品だった。終いには、呪術、オカルト、二重人格、ESP、SF…と、この物語は一体何の物語だったっけ?と思わせるほどにジャンルが混ざり合う。破天荒な作品だった。

んー、やっぱりそのへんがメフィスト受賞の決め手だったのかなー。